橋の無い島“百島”で、廃校となった旧中学校に現代美術作家の柳幸典と原口典之が相見え、大型インスタレーションを展示します。
柳がアメリカで制作した初期の大作《Wandering Mickey》が600本のドラム缶により新たに再構成され、現代の石油文明をユーモラスに批判し、テート・モダンを始め多くの美術館に収蔵される柳の代表作「アント・ファーム・シリーズ」は現代の混迷する世界を端的に視覚化します。
そして、ART BASE 百島のために制作される原口典之の神話的代表作「オイル・プール」の新作は、離島の廃校で現在のわたし達の生きる世界を怪しく映し込みます。

会場:ART BASE 百島 /N Gallery

アーティスト:柳幸典、原口典之

協力:N氏、ミヤケファインアート、株式会社八杉商店、山陽染工株式会社

柳 幸典 YANAGI Yukinori

1959年福岡県生まれ イエール大学大学院美術学部彫刻科修了。
1993年、第45回ヴェネチア・ビエンナーレに選ばれ、アペルト部門で日本人で始めて受する。以後ニューヨークにスタジオを構えて、アンソニー・ドフェイ(ロンドン)、ピーター・ブラム(ニューヨーク)での個展や、1996年サンパウロ・ビエンナーレ(ブラジル)、1997年ビエンナーレ・ド・リヨン(フランス)など多くの国際展に招待される。2000年のホイットニー・バイアニュアルでは、ニューヨーク在住の作家として外国人で始めて選ばれる。1992年の直島コンテンポラリー・アート・ミュージアム(当時)の開館に伴い個展に招待された事が始まりで瀬戸内海の島の魅力に取り憑かれ、1995年に銅の精錬所廃墟がある犬島に出会い「犬島アートプロジェクト」を着想する。
2008年、明治の近代化産業遺産と昭和の三島由紀夫のメッセージに自然エネルギーの技術を融合させた美術館、犬島アートプロジェクト「精錬所」を完成させる。
ニューヨーク近代美術館やイギリスのテート・モダンなど多くの美術館に作品が収蔵され、ユーモアと社会性を帯びた挑発的作品内容は常に物議を起こし、ベニスビエンナーレで受賞した「アントファームシリーズ」は動物愛護団体から攻撃を受けるなど、柳の創作行動は美術の枠に納まらない。
2007年より都市の遊休施設をアートで活用する「広島アートプロジェクト」をディレクションする。

原口典之 HARAGUCHI Noriyuki

1946年神奈川県横須賀市生まれ 日本大学美術学部美術学科卒業。
60年代後半から美術家としての活動をはじめ、1977年、ドイツのカッセルで4年ごとに開催される国際的な美術展、「ドクメンタ6」に初めて日本人作家として選ばれ、廃油を満たした巨大な鉄のプールを発表し欧米中心の美術界に衝撃を与える。続いてパリ市立近代美術館での「第10回パリ青年ビエンナーレ」に参加し、1978年にはデュッセルドルフのGalerie Alfred Schmelaで海外での初個展を成し遂げる。
2001年、ミュンヘンのレンバッハハウスにおける個展「NORIYUKI HARAGUCHI」、2007年ハンブルグのクンストハーレにおけるマレーヴィッチへのオマージュ展“Das Schwarze Quadrat. Hommage en Malewitsch” など、大規模な個展で海外での評価が高い。最近では、2009年に横浜のBankART1929のStudio NYKで国内では初となる新作を含む大規模な回顧展「Noriyuki Haraguchi: Society and Matter(原口典之 社会と物質)」を開催して、その存在感の大きさを改めて国内に知らしめた。今秋、ニューヨーク近代美術館で開催される「TOKYO1995-70」展に参加、ART BASE 百島で制作される「オイル・プール」の新作は、サイトスペシフィックに展示された状態としては世界に二つしか現存していない。